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「なんだか、しんどい」「少し、休みたい」そんなときの「街の保健室」です。

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こたに医院 の日記

鯨の町。

2011.07.25


14才の女の子が悩み苦しむ様子に胸が詰まり
ました。
彼女のお父さんは和歌山県太地町の鯨取り
の漁師さんです。
よく知られているように、ここでは17世紀以来
沿岸捕鯨が盛んでした。
その伝統は、昭和に入っても南氷洋での遠洋
捕鯨の乗組員の多くがこの町出身であったと
いうことでも分かります。

けれども、1979年、国際捕鯨委員会(IWC :
International Whaling comission)で、母船式
商業捕鯨の禁止の採択などが行われる中で、捕鯨
自体が衰退し、現在は南氷洋でも、いわゆる「調査
捕鯨」のみ、行われていた状況でした。
ただし小型鯨であるゴンドウクジラのみを対象とする
沿岸捕鯨は規制外であるため、太地町では、イルカ
追い込み漁とともに、続けられています。
そのため、アメリカやオーストラリアを拠点とする
反捕鯨団体 シー・シェパード Sea shephardの
活動の対象になってしまい、他の反捕鯨団体も
含めて、相当数の運動家が常駐している模様です。
シー・シェパードは、南氷洋でも、日本の調査捕鯨船
に体当たりしたり、発炎筒や化学薬品の入ったビンを
投げ込むなどの過激な反対行動を繰り広げている
のは、よく知られています。
そのためもあり、日本政府による今年度の調査捕鯨
は中止となり、今後も縮小・中止の可能性まで出て
きました。
太地町でもかなり過激に行動していて捕ったイルカの
生簀の網を切ったり、捕鯨漁師に言葉やカメラで嫌
がらせをしたり、様々なサボタージュ(破壊行動)を
行っています。
自分は見ていませんが、先年アメリカでアカデミー・
ドキュメンタリー映画賞をとった「the cove 入り江」
という映画でも、そのあたりが取り上げられている
ようです。
昨日、7月24日、NHKの教育テレビで放映された
「鯨の町に生きる」は、この町で鯨取りの仕事をして
いる漁師さんたちとその中のいくつかの家庭、そして、
町に常駐するシー・シェパード等の反捕鯨団体の行動
を取り上げ、その軸の一つが、14才の少女の苦しみ
でした。
彼女の父親が船の修理のため、軽トラックを出そうと
したらその前に立って、妨害するシー・シェパードの
運動家。
止むなく、警察を呼んでも、実害なしで規制もできない
シー・シェパードの巧妙な妨害活動。
影浦という捕獲したイルカやクジラの生簀の監視を
している漁師や漁協の担当者を執拗にカメラで取り
囲み苛立たせ挑発したり、ヒステリックに、「killer!
killer!」と繰り返すシー・シェパードのやり口は客観的
に見ても、かなりあくどいと思われます。
素朴な漁師たちは、精神的にも、疲れ切っています。

その親方的な存在の初老の男性も、かつて、捕獲した
イルカやクジラの屠殺のとき、その眼を見るのがつらく
 マグロや他の魚の漁師になったことがあったそうです。
けれども、収入が激減し、仕方なく、また捕鯨に戻った
とか。
今は、家族のために、仕事を辞める訳にはいかないの
です。
末っ子の娘が、看護学校を卒業するまでは。
人口3000人あまりの、この小さな町では、平均年収が
240万円、けれども、鯨取りは半年の漁期のみで、年収
360万円とのことです。

冷静に見たつもりでも、シー・シェパードのやり方は一方的
で、ある意味、幼稚であり、こんなやり方でこれからもずっと
支持者の共感を得続けることは不可能でしょう。
それは、分かっていても、今、目の前の妨害行為に耐える
太地町の漁師さんたちの気持ちはもう限界です。
そんな父親たちを見ながら、14才のこころは張り裂けそう
です。
そんなとき、彼女の中学校で、捕鯨についてクラスで話し
あう機会がありました。
クラスメートから、父親の仕事について非難されるに違い
ないと恐る恐る参加しましたが、その心配は杞憂でした。
クラスメートは、もっと、大人で「地域の伝統を外国から
あれこれ言われること自体変じゃないか、って言ってくれた
のです。
急いでうちに帰りその話を父親にすると、悩んでいた父親
は、ほっとしたように喜んでくれました。
太地町のみんなが、悩み苦しんでいたのです。

自分はというと、数年前、一人で、東京の渋谷の駅前を
歩いていたとき、子どもの頃から、人一倍大好きだった
鯨料理のお店に行き当たりました。
おいしそうでしたが、あんな、美しい生きものを自分は
食べてはいけない、って思い、止めました。
でも、自分はシー・シェパードではありません。
自分は、これから、クジラを食べないでしょうが。
太地町の人の立場は守ってあげたい気持ちと相反する
ことなく。

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