こたに医院 | 日記 | フィッシュ・アンド・チップスの話。

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こたに医院 の日記

フィッシュ・アンド・チップスの話。

2011.10.26


開高健という作家がいました。
亡くなって、どのくらいになりますか、
生前、いろいろと賛否の分かれた作家
でしたが、ベトナム戦争に朝日新聞の
特派員として、従軍し、その体験を基に
書いた「輝ける闇」という作品の印象は
鮮やかに、脳裏に焼き付けられています。
狩猟や釣りも好きで、南米を釣りして書いた
紀行文「オーパ!」(ブラジルの人びとの
感嘆句で、ワオッ!って感じ?)は、最高。

その中の「献辞」=捧げることばが、好きです。

  何かの事情があって
  野外に出られない人、
  海外へ行けない人、
  鳥獣虫魚の話の好きな人、
  人間や議論に絶望した人、
  雨の日の釣り師・・・・
  すべて
  書斎にいるときの
  私に似た人たちのために

そんな、味な作家が、かつていたのです。
大阪の天王寺出身で、元サントリーの
宣伝部出身の。

その開高健のグルメ文も、面白かった。
覚えているのが、ロンドンの「フィッシュ・アンド
チップス」の話。
魚の切り身の揚げ物と揚げたポテト、です。
秋、今頃の季節あたり、ロンドンの街角に、
屋台やテークアウトの店がありました。
(この、過去形なのは、どんどん、数が減って
いるのです。若い人がパンみたいなピザやハ
ンバーガーを食べるもんで。)

彼は、屋台のフィッシュ・アンド・チップスの味
について論じ、こんな話で締めるのです。
そのフィッシュ・アンド・チップスは、タイムズ
(朝日新聞や日経くらいの高級紙でくるんであ
ってはいけない。
味が損なわれるからである。
いわゆる、タブロイド紙(夕刊フジみたいなスキ
ャンダルやゴシップ満載の大衆新聞)に限り、
もし、それが、美女のなまめかしい写真であれ
ば、いっそう、よろしい。
ほかほか、あったかいのである、とか。
もう、30年以上前に読んだ文章だから、自分
の頭の中で、かなり、加工されてしまっている
かも知れません。
でも、それを頭に仕舞って、初めて、ロンドン
で、本場のフィッシュ・アンド・チップスを食べに
行きました。
でも、そのとき、もう、開高健は鬼籍の人でし
たが、彼が生きていたら、何と言ったでしょう?
時代は変わり、ロンドンの場末の街角の揚げ
物屋さんなのに、マクドナルドでもあるまいに、
発泡スチロールの容器に入って、はいどうぞ。
得体の知れない、黒いお酢は健在で、実は、
それなり、おいしくて、うれしかったのですが、
何だか、開高さんに申し訳なくて。

時代って、どうして、面白くない方にばかり、
流れて行くんでしょうね。
それにしても、秋になると、食べたくなります。
ロンドンのフィッシュ・アンド・チップス。
マクドで、つい、フィレ・オ・フィッシュを買ってし
まうの、何となく、あれから、パンとタルタルソ
ースを引いたようなもんなんです。

開高健さん、あの世で、何してはるんやろね。

ああいう人が減って、寂しい世の中。

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